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組織で働く
ほとんどの人が組織に所属した上で働きます。正社員でも契約社員でもアルバイトでも、雇われているということは、一人ではなく組織で働いているわけです。それでは、組織の中で働く時に、心の健康を崩さないためにはどうしたら良いのでしょうか? また、どのようにモチベーションを保ったら良いのでしょう? どんなメンタリティで働けば良いのか、組織行動論の視点で解説します。
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休職するにはどうしたらよいか?心の健康を崩した時は、心の休養が大事です。まずは、休日にゆっくりする、リラックスする、ストレス発散する時間を作って下さい。 心の健康を崩し、今まで通りに働けない場合や、職場に行けない場合もあるでしょう。その際は、休職(病気休暇)も選択肢の一つです。 休職には、心の病気により休職が必要である旨が書かれた診断書が必要です。診断書は、精神科や心療内科のクリニック(または病院)で作成してもらいます。診断書には大体どれだけの期間を休むのか、見込み期間を書くことが一般的です。 診断書を提出しない場合は、有給休暇や欠勤扱いになりますので、注意して下さい。 また、職場の健康保険(社保)に入っている方は、4日以上の給与が出ない休職の際に、健康保険から傷病手当金が支給されます。詳しくは傷病手当金の項目をご参照ください。
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傷病手当金について職場の健康保険に加入している場合、休職中は傷病手当金を申請することができます。これは毎月支払っている社会保険料の恩恵ですから、休職中は迷わず申請して下さい。 傷病手当金の支給には以下の条件があります。 治療中であること。 今まで従事している業務ができない状態であること(医療機関が労務不能であったことを申請書に記載します)。 4日以上仕事を休んでいること。 給与の支払いがないこと(給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給されます)。 傷病手当金は、過去の療養期間について申請します。これから休む予定の分(未来の期間)を申請することはできません。 傷病手当金の金額は過去12ヵ月間の標準報酬月額の平均額の2/3です。1/3少なくなりますが、所得税はかかりません。なお、社会保険料や前年の住民税の支払い義務は継続します。 傷病手当金の支給は最長1.5年です。傷病手当金は退職後も申請可能です。これを申請したから復職しなければいけないという義務は発生しません。 傷病手当金の詳細については、協会けんぽ(全国健康保険協会)のホームページに記載されています。是非ご覧ください。 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/ なお、労災に該当する場合は、労災保険からの支給になるため、申請方法が異なります。精神疾患では、業務による強い心理的負荷が認められた場合のみ労災と認められますが、この「強い心理的負荷」に該当するか否かは、労働基準監督署が行政の決めた基準によって判定します。現在のところ、労災と認めらるケースは少ないのが実情ですが、認められる場合もあります。労災に該当するかどうかは、地域の労働基準監督署にお問い合わせ下さい。
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薬の治療について精神科・心療内科の治療は薬を使う治療と、薬を使わない精神療法や社会的支援に分けられます。 薬物療法は診断に応じて処方されます。ただし、うつ病と不安症では同じ抗うつ薬を使う等、違う診断でも同じ薬を使うことは多いです。抗うつ薬という名前だから、うつ病にしか使わないということはありません。 薬を使う際は、症状を改善させることだけでなく、副作用も考えて治療します。なかには、認知機能障害という頭が回りにくくなる副作用が出る薬もあります。頭脳労働の方は、認知機能障害が出にくい薬を選んだ方が良いでしょう。また、眠気が出る薬もありますので、車を運転する仕事の方は眠気の副作用に注意が必要です。 薬には副作用のリスクはありますが、公的に承認された薬には、科学的に実証された効果があります(漢方薬を除きますが、日本では科学的に効果が実証されないと薬が公的に承認されません)。ある程度症状が強い場合や症状が持続している場合は、薬を使用した方が早く改善します。 早く心の健康を取り戻したほうが、人生にとってメリットが大きいはずです。薬のメリットは決して小さくないので、必要に応じて使用することを勧めます。
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薬以外の治療について薬以外の治療としては、精神療法や社会的支援があります。休職して休養を取ることも、この一つです。 病状が軽い場合や、職場環境のストレスが主な原因の場合は、薬を使わず休養するだけで精神的に改善する場合があります。また、薬を使う場合でも、薬以外の治療を組み合わせることが一般的です。 精神療法は、認知行動療法が有名ですが、これは複数の精神療法のパッケージです。自分の考え方・捉え方を修正する認知療法や、あえて苦手なものに立ち向かい克服していく暴露療法(行動療法)などを組み合わせます。また、認知行動療法には色々なパターンがあり、単一のマニュアルがあるわけではありません。 認知行動療法は簡単な理論であり、プロフェッショナルでなくても利用可能です。また、色々な治療に応用されます。たとえば、復職に向けたリハビリテーションは、認知行動療法の理論が取り入れられたものが多いです。 また、社会的支援も治療的な側面があります。経済的な問題や仕事の問題など、社会的なトラブルが原因で心の健康を崩すことは少なくありません。その場合は、社会的な問題の解決も重要です。保険や福祉制度の活用も治療上は重要ですので、知っておいて下さい。
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復職リハビリ・リワークある程度、心の健康が回復しても、いきなり仕事に戻ると再発のリスクが高いです。復職に向けたリハビリが必要です。 リハビリと言っても、一人で簡単にできるものが多いです。 例えば、自宅や図書館、近くの喫茶店などを利用して、仕事に近い作業を行ってみるという仕事の模擬訓練もリハビリの一つです。 また、職場に実際に行く通勤訓練もよく行われます。最初は行きやすい時間帯に職場の近くまで行くだけで良いです。職場を見ただけで強い不安に襲われる場合もあるので、無理せず行ってください。慣れてきたら、出社時間と同じ時刻に職場に行く練習を繰り返します。これができれば、遅刻せず仕事に行けることの証明になりますから、職場復帰が可能と判断しやすいです。 生活リズムを、働いていた時と同じ状態に戻すことも大事なリハビリです。休職中はどうしても遅寝・遅起きなど、生活リズムが以前とずれてしまいます。そのままだと遅刻してしまうので、これを修正していきます。早く寝ようとしても難しい場合は、30分から1時間ずつ早起きして下さい。また、起きたら光を浴びます。光が体内時計をリセットする効果があるためです。電気をつけたり、カーテンを開けたりして、部屋を明るくしてください。 専門のリハビリ施設(リワーク施設)を利用する場合もあります。これは必須ではありませんが、人によっては有効です。ただし、自分の仕事に合ったリワーク施設でないと、効果は弱まってしまいますから、施設選びに気を付けて下さい。
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職場との話し合い休職中は、定期的に職場とコンタクトを取り、現在の症状や治療状況、今後の見込みなどを話しておくと、復職する時にスムーズです。職場としても、従業員から「いきなり復帰します」と言われても対応できませんから、復職前には特に連絡が大事になります。 また、現在の職場環境がどのような状況なのか、職場の人に聞いておくことも大事です。コミュニケーションとはお互いに情報を共有することです。自分の現状を職場の方に伝えると同時に、職場の情報も聞き取るようにしましょう。 ある程度病状が落ち着いて復職を考える時は、再発防止に向けた対策を話し合う必要があります。職場環境の問題がある場合は、その問題を解決しなければ再発の可能性が高まります。心の病気は再発しやすいので、働き方や職場環境の調整、部署異動などについてよく話し合いましょう。どうしても意見が一致できないなら、転職も選択肢です。 復職前の話し合い、コミュニケーションは1度で終わらないことが多いです。何度か話し合いの場を設けて下さい。
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復職は計画的かつ段階的に復職する時は、主治医の意見も聞きつつ、産業医と面談したり、職場の上司と面談したりして、大勢の意見を取り入れて計画を立てていきます。復職したら症状が再発したという事例は多いです。そうならないように、再発防止の計画を立てていきます。 再発防止のためには、段階的に復職する方が良いです。例えば、隔日勤務、時短勤務(1日4-6時間程度の勤務)などを経て、2週間毎に時間を増やし、最終的にフルタイムに戻すなどの方法を取ります。 心の健康の問題は個人差が大きいので、どの程度のペースで時間を増やせば良いのか判断するのは難しいです。とりあえずスケジュールを設定し、本人の状況次第でペースを早めたり遅くしたりと調整します。 なかには、休職前と同様の働き方や、フルタイム勤務が可能でなければ、職場復帰を認めないという企業も存在します。その場合は、休職中に復職のリハビリを入念に行う必要があります。
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復職後の再発防止完全に復職してからも再発防止の対策が必要です。心の病気は再発しやすいためです。しばらくは、過度なストレスをかけないよう自分自身でも配慮していきましょう。無理は禁物です。 また、再発を防ぐ薬もあります。例えば、うつ病の方は、抗うつ薬を続けることで、うつ病の再発を予防できます。時々、薬を止めてから復職しなければならないと誤解している方もいますが、これは逆です。再発防止のため、復職後も薬を続ける方が安心なのです。 また、再発予防には、本人のストレスや心の状態を定期的に確認することも重要です。再発の兆候が見られた場合は、早めに発見し、早めに対策すると重症化を防ぐことができます。そのために、復職後も職場で定期的に面談する方が良いです。通院もしばらく続けると思っていてください。
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